浮世絵とれびあ
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浮世絵の査定のポイント

油絵との比較

一点もののため、その真贋鑑定では過去に、誰が所有していたのか、展覧会に出品されたことがあるのか、といった履歴が重要になる。「美術品の履歴」を英語ではProvenanceと呼ぶ。Provenanceはフランス語に起源を有し、その定義は、the chronology of the ownership, custody or location of a historical object(歴史的オブジェクトの所有権、保管または場所の経緯記録)である。ハイエンドのオークションハウスが作品を紹介する場合には、どこの国の王が最初に所有し、その後、豪商が購入し、云々といった履歴が披露され、由緒正しいものであることを証する。

摺もの

一方、浮世絵は版画で、同じ作品が多数存在する。江戸時代の初摺は通常、200枚であった。人気作品となり、売り切れした場合には、後摺される。最も増摺されたもので、約3,000-10,000枚とも言われている。しかし、板木は「木製」のため、それほどの枚数を増摺すると、さすがに木が擦り切れして、後半の作品は質が低下する。また、短時間に沢山刷る必要があるため、注意力が低下して、ズレが生じたりする(すなわち、「白抜け」が生じる)。
このようなことから、浮世絵の価値は、過去に誰が所有していたという事実よりも、作品の状態(品質)で決まる。最も価値があるのは、初摺品である。

摺りの回数以外の減点項目を、以下に説明する。

色目

過去の保存環境により、色の状態は大きく異なる。一般論として、日本は高温多湿のため、化学反応が促進され、脱色しやすい。一方、欧米は気候が比較的温暖で、湿度が低い傾向があり、江戸時代の色がそのまま保持されている場合がある。

浮世絵の初期から中期の多くの作品では、色が薄くなっている。例えば、歌麿の作品で色が保持されているものはとても少ない。また、色の経時変化もあり、緑は青に変色し、紫は茶色に変色する。例えば、青っぽい作品をよく見るが、オリジナルは緑であったと考えられる。

トリミング

トリミングは大きな減点要素である。絵の部分にまでトリミングされている場合には、価値が大きく低下する。

虫食い

最も頻繁に遭遇するもので、その程度も千差万別である。2−3個の虫食い跡ならば、修復することも可能だが、多数存在する場合には、費用の観点から修復は現実的ではない。

破れ

大小の破れがあり、小さいものでは大きな影響はないが、1/3も敗れている場合には、殆ど無価値となる。

綴じ穴

浮世絵は和本のように、紐で綴じてまとめていたため、通常、左右どちらかに3-4個程度の数ミリサイズの穴が空いていることが頻繁にみられる。これらの穴は、修復が比較的容易である。

着色

特に明治期の作品では、色移りしている場合がある。そのような場合は、価値が大きく低下する。専門店で「洗い」を実施することで、多くの着色は除去可能である。しかし、除去が難しいものがあり、代表的なものは「墨」と「朱肉」である。これらは基本的に除去困難で、どうしても除去したい場合は、強力な漂白剤で脱色する。その場合、浮世絵の色も同時に抜けてしまうので、現実的ではない。

いたずら書き

大部分の浮世絵は高級品でなかったため、子供のいたずら書きが残っていることがよく見られる。特に、幽霊系の作品では、おばけの顔が、墨で黒塗りされていたりすることがある。これは大きな減点要因となる。