浮世絵の世界では、コピー品に対して復刻版という独自の呼び方がある。復刻版は工芸製品ではあるが、原作の忠実なコピーを原則としており、作家の創造性とは無縁で、アート作品ではない。そのため、復刻版は二次市場では原則、無価値である。
では、復刻版を贋作と呼ぶべきか? 復刻版がコピー品であることを明示している場合には(例:アダチ版画の印あり)、復刻版という呼び名は適切だが、そのような識別性を示すことなく、コピー品である場合には、躊躇なく贋作(コピー)と呼ぶべきである。
復刻版の定義:オリジナルの版木以外、すなわち(後世の)版木で摺られた浮世絵を指す。その大部分は、企業が営利目的として、オリジナルに酷似するように作成したもの。コピー品であることを示す印が表面または裏面に付されている。
複製品はいつ、どこで作成されるのか(されたのか?)?
製造場所:ほぼ全ての復刻版は日本国内で製造された(ている)。
製造時期:明治時代から作成されており、現代でも作成されている。
複製品の特徴として、以下が挙げられる:
- 輪郭線が微妙に太い
- 色目が良すぎる
- トリミングされていないものが大部分
- 虫食いがないものが多い
- 紙質が異なる(厚い)
- 色素が異なる
- 細部が雑
- オリジナルと比較すると、必ず異なる部分がある
複製品が多いのは、北斎、広重、国芳、写楽、春信、歌麿などで、これらの絵師の作品では、復刻版/贋作を疑う必要がある。
一方、明治以降に活躍した作家では複製品はまれである(例外は芳年)。なお、一部の新版画では、複製が存在するので注意が必要である。
例外的に価値のある復刻版
- 明治時代に作成された復刻版で、北斎などの一部の作品の復刻版はその完成度及び希少性から、ある程度の値段がついている。それらの一部の複製品は、精査しない限りはオリジナルと区別することは困難である。国内外の美術館においても、明治時代の複製品を、オリジナルと勘違いして収蔵している例が見られる。もっとも、贋作騒動が起きるとやっかいなので、気がついていない振りをしている可能性もあるが…(展覧会で見破られる可能性は極めて低い)。
- 国芳のコピーで有名な勝原伸也の作品が該当する。現在、数万円から数十万円で取引されており、一定数のファンがいる。作品の裏には「彫摺 勝原伸也」と印が必ず押されている。
デジタル時代の贋作の特徴
- 画像は美術館などで公開されている本物のスキャン画像を用いており、「本物」と同一である。
- 上位機種のインクジェットプリンターは、色の再現性が優れており、30cm程度の距離では判別不能(専門家でも)。
- 古和紙が使用された場合は、紙の手触りでも判別は容易ではない。
- 確実に判別する方法は、拡大鏡で細部を観察することである(インクジェットプリンターの特徴があるか否か)。これが最も確実な印刷物であるかどうかの判定方法である。
複製品を真作のフリをして販売しているのは誰か?
実店舗(路面店)を有する浮世絵専門店では、明治時代を含めて贋作を真作として販売している例は見たことがない。一般古美術商やネット専門浮世絵販売業者/個人が、これらの復刻版/贋作を出品している(詳細は、「贋作販売者リスト」を参照)
デジタル贋作を見破る方法(ヤフオク)
出品作品の画像が1枚しかない場合には、贋作が確定的である。稀に作品の一部を拡大して複数枚をアップしているが、全ては同一の画像を用いているので、判定可能である。また、裏面の画像がない場合も、デジタル贋作が強く疑われる。
ヤフオクでは相当数の複製品が販売されており、細心の注意が必要である。
デジタル贋作の出品は、年に1回、2-3週間の期間に集中的に実施されており、これまでに2回確認されている。各回の被害額は500-1,000万円と推計される。
ネットオークションの場合には、贋作リスクが常につきまとうため、支払いはクレジットカードが大原則である。